「何しろ年を取り過ぎて、自分より年上の見習うべき先人は皆亡くなりました。長生きするということは淋しい限りです。年の功というのを若い人々に示したいとおもうのですが、自分がつくってきたものの中にいれていくしかない、心が求めている線や面を「つくる」という事で表現するしかない。」
「年をとって良いことは、自分を自分以上に見せるとか、思い上がりのような自分が遠のいて、ありのままの自分、以上でも以下でもない、それ以上のものなど表現できっこないという事が、この頃わかってきました。若い時より正直になったことだけは事実ですね。それを老いということの価値にしたい、勝ちにしたいという祈りみたいな気持ちで、毎日墨を擦り、筆を執っています。以前はもっと良いものが描けるはずだとか、自分の作品を客観的に見ることができましたが、今はそれが一つになっている、なりかかっているのが今の私ではないかと思います。」
そう話すのは今年で104歳になる孤高の芸術家、篠田桃紅氏。
1913年 旧満州・大連に生まれ、幼少より父に書の手ほどきを受け、その後、下野雪道に師事。
戦後、本格的に創作活動を再開し、既成の書の形にとらわれない墨による新たな形を描き出す独自の抽象芸術へと移行。1956年、単身で渡米し、ニューヨーク屈指のギャラリーが作品を取り扱うようになり、まさに世界を股に活躍する芸術家です。
その作品は、メトロポリタン美術館、大英博物館、ボストン美術館などに収蔵され、増上寺や国立京都国際会館、国立代々木競技場など公共のアートも多数手掛けています。また昨年ベストセラーとなった著書「一〇三歳になってわかったこと」など、エッセイスト・クラブ賞受賞作家でもあります。
「私は「つくる」という手立てを持ったお陰で、こうして人々と出会い、語れるというありがたい特権を持ったのだとつくづく生きている冥加があるという感謝のおもいです。」
墨と筆を手に取り1世紀。「紙も墨も筆も、私に忠誠を誓ったことはありません。いつも私を裏切ります。
そう語り、今日も桃紅氏は青山のアトリエで大きな硯に水を張り、日々の制作を続けています。
硯
65センチほどもある中国の栄代のもので、端渓という谷間から彫ってきた石で作ったもの。「吾亦可耕」(われもまた耕すべし)と名が彫られている。店の看板だった非売品を「毎日水を入れて使ってこそ硯。私に譲りなさい。」と迫って手に入れたという。
会場:銀座三越7階ギャラリー 会期:2016年10月19日(水)~25日(火)※最終日は午後6時閉場
孤高の芸術家 104歳 篠田 桃紅氏が、心に浮かんだ一瞬のかたちを一筆に託して制作した、神々しく鬼気迫る最新作の原画、書、版画まで30余点を一同に展観致します。
三越伊勢丹 TOKYO ART LOUNGEでは、個展開催に先駆けて、出品予定の作品をご紹介致します。(ご予約にてお承り致します。作品のお渡しは展覧会終了後となります。)
また、当サイトでご予約いただきましても、店頭で売約済みとなっている場合もございますので、予めご了承ください。
1913 3月28日、旧満州、大連に生まれる
1929 16 女学校の師である下野雪堂に書の個人指導を受け始める
1932 19 与謝野晶子門下の歌人・中原綾子に短歌の添削指導を受け、雑誌『いつかし』などに投稿
1936 23 初めての書の個展(鳩居堂、銀座)
1950 37 書道芸術院に所属(~1956年) 春蘭、桃紅二人展(銀座三越)
1953 40 「日本の建築と書展」(ニューヨーク近代美術館、以後米巡回)
1954 41 サンパウロ市400年祭の日本政府館(丹下健三設計)の為に壁書《花の歌》を制作
1955 42 映画〈日本の書〉の撮影の為、桃紅の制作現場を取材(1956年完成 P・アレシンスキー監督)
ワシントン州国際見本市日本モデルルーム(剣持勇設計)の為に《炎・水》を制作
ヘルシンボール生活文化展(スウェーデン)日本館(剣持勇設計)の為に壁書《詩》を制作
1956 43 渡米、ニューヨークに滞在 個展(スエゾフ・ギャラリー、ボストン)
1957 44 個展(タフト美術館、シンシナティ)、 個展(アート・インスティテュート・オブ・シカゴ東洋室、シカゴ)
1959 46 個展(パレ・デ・ボザール、ブリュッセル)
「日本美術の伝統と革新―白隠、志功、桃紅、南谷4人展」(クレラー・ミュラー美術館、オテルロー)
1960 47 フィラデルフィアから来日した刷師アーサー・フローリーの勧めで、リトグラフ制作を始める
パレスホテル(東京)特別貴賓室(1)、特室(3)の為に壁画《みなもと》他3点を制作
1961 48 第6回サンパウロ・ビエンナーレ招待出品
1963 50 明治座(吉田五十八設計、東京)の為に緞帳を制作
1964 51 国立代々木屋内総合競技場(丹下健三・都市建築設計研究所設計、東京)貴賓室の為に壁画《水冠》を制作
1965 52 個展(ベティ・パーソンズ・ギャラリー、ニューヨーク 以降77年まで)
国立京都国際会館(大谷幸夫設計)2階ロビーの為にレリーフ《展開》と壁画《出遇》を制作
1966 53 カナダ・モントリオール万国博覧会日本館(芦原義信設計)中央展示室の為に壁画《みなもと》を制作
1974 61 増上寺(東京)大本堂、ロビーの為に壁画を、道場の為に襖絵を制作
1977 64 ワシントン駐米日本大使公邸(吉田五十八設計)の為に壁画を制作
1978 65 個展(アート/アジア・ギャラリー、ケンブリッジ大学)
1979 66 随筆集『墨いろ』、第27回日本エッセイスト・クラブ賞受賞
「岡田、篠田、津高〔20世紀日本抽象絵画三人のパイオニア〕」(フィリップス・コレクション、米巡回)
ホテル・ヴィトシャ(黒川紀章設計、ソフィア、ブルガリア)の為に壁書を制作
1983 70 「篠田桃紅書 守屋多々志画 小倉百人一首展」(日本橋三越本店、東京以後国内を巡回)
1986 73 1986年ノーベル賞の為の『オマージュ・オ・ノーベル』(オリジナル・リトグラフ集)刊行
1992 79 回顧展「篠田桃紅 時のかたち」(岐阜県美術館)
1993 80 御所、御食堂の為に絵画を制作
1996 83 個展(シンガポール国立近代美術館)
1998 85 個展(アネリー・ジュダ・ギャラリー、ロンドン)
1999 86 「東京文化会館」名称ロゴを制作
2001 88 個展(三菱UFJモルガン・スタンレー証券の30周年記念展)
2003 90 個展「篠田桃紅 朱よ」(原美術館、東京)皇后陛下行啓
菊池寛実記念 智美術館の為にロビー・階段室に壁画を制作
「篠田桃紅美術空間」岐阜県関市に設立
2004 91 個展(ギャラリー サンカイビ、東京以降毎年開催)
2005 92 京都迎賓館の為に絵画を制作
コンラッド東京の為に絵画を制作
雑誌『Newsweek』で「世界が尊敬する日本人100」に選出
2009 96 個展(ローマ日本文化会館、ローマ)
2010 97 個展(致道博物館 創立60周年記念特別展、山形)
2012 99 巡回展三越 日本橋本店、仙台、広島、松山、銀座(皇后陛下行啓) 伊勢丹新宿店
2013 100 個展 伊勢丹新宿店、篠田桃紅美術空間、岐阜現代美術館、岐阜県美術館、菊池寛実記念 智美術館
2014 101 個展 伊勢丹新宿店、銀座三越、松山三越、福岡岩田屋三越
2015 102 個展 伊勢丹新宿店、ギャラリーサンカイビ(皇后陛下行啓)、銀座三越、松山三越、福岡岩田屋三越
【 主な収蔵美術館 】
アート・インスティテュート・オブ・シカゴ
オルブライト=ノックス美術館(ニューヨーク)
菊池寛実記念 智美術館
岐阜県美術館
岐阜現代美術館
クレラー・ミュラー美術館(オテルロー)
グッゲンハイム美術館(ニューヨーク)
シンシナティ美術館
スミソニアン博物館(ワシントン)
関市立篠田桃紅美術空間(岐阜県常設)
シンガポール国立美術館
大英博物館(ロンドン)
ティコティン日本美術館(イスラエル・ハイファ)
ドイツ国立博物館東洋美術館(ベルリン)
東京国立近代美術館
富山県立近代美術館
新潟市美術館
デン・ハーグ市美術館
フォッグ美術館(マサチューセッツ・ハーバード大学)
フォルクヴァンク美術館(エッセン)
ブルックリン美術館(ニューヨーク)
ボストン美術館
北海道立函館美術館
メトロポリタン美術館(ニューヨーク)
【主な著書】
人生は一本の線(幻冬舎 2016)
一〇三歳、ひとりで生きる作法(幻冬舎 2015)
一〇三歳になってわかったこと(幻冬舎 2015)
その日の墨(河出文庫 2014)
百歳の力(集英社 2014)
桃紅百年(世界文化社 2013)
桃紅えほん(世界文化社 2002)
桃紅―私というひとり(世界文化社 2000)
墨を読む- 一字ひとこと(小学館 1998)
きのうのゆくえ(講談社 1990)
日本の名随筆 「墨」(作品社 1985)
おもいのほかの(冬樹社 1985)
朱泥抄(PHP研究所 1979)
墨いろ(PHP研究所 1978) 日本エッセイスト・クラブ賞受賞
いろは四十八文字(矢来書院 1976)
【 主な作品収蔵 】
アメリカン・クラブ(東京)
川崎市国際交流センター
京都大学基礎物理学研究所
京都迎賓館
皇居(東京)
国際交流基金(東京)
国立代々木競技場
国立京都国際会館
駐仏日本大使館(パリ)
駐米総領事館(ニューヨーク)
駐米日本大使公邸(ワシントン)
日本外国特派員協会(東京)
日本銀行(東京)
ローマ日本文化会館(ローマ)
沼津市庁舎
フォード財団(ニューヨーク)
ロックフェラー財団(ニューヨーク)
朝日生命本社(東京)
オランダ銀行(東京)
京王プラザホテル(東京)
コンラッド東京
ザ・キャピトルホテル東急(東京)
シティ・バンク(ニューヨーク、東京)
増上寺(東京)
JP・モルガン・チェース銀行(ニューヨーク、東京)
帝国劇場(東京)
電通本社(東京)
東京デュポン社(東京)
日航ホテル(東京)
パイオニア本社(東京)
パレスホテル(東京)
フィリップ・モリス社(東京)
福岡RKB放送センタービル
ホテル・オークラ(東京)
ホテル・ニューオータニ(東京)
ホテルKKR金沢
ホテル・ヴィトシャ(ブルガリア・ソフィア)
三菱UFJモルガン・スタンレー証券
明治座(東京)
東燃ゼネラル石油(東京)
UBS(東京)
サ・ペニンシュラ東京